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白金めっきの方法とは?

はじめに

電子部品や水処理装置など、過酷な環境下でも長く使える部品が求められる中で採用されるめっき加工が「白金めっき」です。白金は耐食性・耐熱性・化学的安定性に優れており、表面処理として施すことで、素材の性能向上を図れます。

しかし、白金めっきには電解方式や無電解方式があり、それぞれの工程や適応素材を理解しなければ、期待通りの性能を発揮できないこともあります。当記事では、白金めっきの特徴や用途、適した素材、電解白金めっき工程の流れを解説します。

白金めっきの方法とは?

1. 白金めっき(プラチナメッキ)の方法

白金めっきとは、非常に希少で安定性に優れた白金の特性を、素材表面に薄膜として施す加工技術です。高い耐食性・耐熱性・耐酸性を生かし、電子部品や電極、装飾品など多用途に活用されています。

白金めっきの方法とは?

1-1. 白金めっきの主な用途

白金めっきには「電解めっき(電気めっき)」と「無電解めっき」の2種類があります。電解めっきは密着性の高い皮膜を形成できるため、白金の耐食性や耐酸化性を生かし、不溶性陽極として白金めっきチタン電極などに利用されます。 クロムめっきや貴金属めっきのアノード、水素水生成器、整水器などにも広く使われているのが、電解めっきです。

一方、無電解めっきは電気を使わず化学反応で皮膜を形成できるため、形状の複雑な部品や非導電性の素材にも均一なめっきが可能です。その特性を生かして、半導体部品や電子機器接点、精密機器部品、工業部品などで無電解めっきが活用されています。また、白金はロジウムと類似する性質を持つことから、装飾品や管楽器、航空機、半導体、電子機器接点などの高機能分野でも採用されています。

1-2. 白金電極としての活用例

白金電極(プラチナ電極)は、化学的に安定し、耐食性・耐酸化性に優れた白金の特性を生かした電極です。特に、 耐食性の高いチタンに白金をめっきした「チタン白金電極」は代表的な製品の1つで、各種の電解処理や水処理装置に広く使われています。家庭用では水素水生成器や整水器の電極として採用され、産業用途では電気化学用電極やアルカリイオン生成装置、燃料電池などにも活用されています。

白金めっきの厚みは通常0.5~2.0μmですが、使用環境によっては10μm以上の厚膜が求められる場合もあります。白金は他の金属やさまざまな形状の基材にもめっき可能で、目的に応じて柔軟に設計できます。こうした汎用性の高さも、白金電極が幅広い分野で支持される理由の1つです。

1-3. 白金めっきの適応素材

白金めっきは、さまざまな素材に対応できる汎用性の高い表面処理です。 代表的な適応素材としては、銅や銅合金、真鍮、鉄やステンレス、ニッケル合金などの金属が挙げられます。これらの素材は、導電性や加工性に優れており、工業分野における電子部品や機械部品として多く使用されています。

また、耐食性の高いチタンやチタン合金にも白金めっきが可能で、医療機器や精密機器などの分野で活用されています。鋳鉄やアルミニウム、インコネル、超硬合金などの特殊な材料にも対応しており、高温環境や過酷な腐食環境下での使用にも適しています。

2. 白金めっきの特徴

白金めっきは、 耐食性や導電性に加え、美観性や生体適合性など、さまざまな特徴を備えています。

・耐蝕性
白金は酸やアルカリに対して極めて強い耐蝕性を持ち、めっきされた部材は厳しい腐食環境でも長期間の使用が可能です。水処理装置や化学プラントなどでも高い耐久性を発揮します。

・導電性
白金は非常に高い導電性を持ち、電子部品や電極、接点などの電気伝導性が求められる用途で重宝されています。白金めっきを施すことで、基材の導電性能を向上できます。

・耐摩耗性
白金めっきはHv300~Hv400程度の硬度を持ち、摩擦や摩耗に強い性質があります。そのため、可動部品や接触部などでも寿命を延ばす効果が期待できます。

・化学的安定性
多くの化学物質に反応しにくい白金は、化学的に極めて安定しています。これにより、腐食性ガスや液体にさらされる環境でも、部品の性能を維持できます。

・耐熱性
白金の融点は約1,800℃と非常に高く、めっき皮膜として優れた耐熱性能を発揮します。高温下でも変質しにくい傾向があり、熱負荷のかかる環境でも安定して使用できます。

・生体適合性
白金は人体への親和性が高く、医療機器や人工関節、歯科器具などにも使用されています。白金めっきも同様に、生体との接触がある場面でも使用できます。

・触媒活性
白金は優れた触媒作用を持ち、化学反応を促進する働きがあります。自動車の排ガス処理装置や燃料電池などで活用され、白金めっきも触媒用途で利用されています。

・装飾性
白金めっきは美しい銀白色の光沢を持ち、見た目に高級感があります。宝飾品や高級時計の装飾用、管楽器などの外装部品にも多く使われ、上質で洗練された印象を演出します。

・環境適合性
一部の白金めっきプロセスでは無鉛処理が可能で、環境への影響を抑えた加工が実現できます。この環境適合性の高さから、環境規制の厳しい分野でも採用が進んでいます。

3. 白金めっきの方法は?工程を解説!

白金めっきは、前処理・めっき処理・洗浄・乾燥といった工程を経て行われます。ここでは、電解白金めっき方法における各ステップの目的や内容を分かりやすく解説します。

白金めっきの方法とは?

3-1. 前処理をする

「めっきの出来栄えは前処理で決まる」とも言われるほど、白金めっきを美しくかつ高機能に仕上げるには、めっき前の「前処理」が極めて重要です。 素材の汚れや酸化物を的確に除去することで、密着性・均一性の高いめっき膜が得られます。

前処理の中心となるのが脱脂工程で、汚れの性質に応じて「溶剤脱脂」「アルカリ浸漬脱脂」「電解脱脂」などを組み合わせます。たとえば、研磨剤や機械油には溶剤やエマルジョン脱脂、仕上げには電解脱脂が効果的です。素材や使用条件に応じた処理を選ぶことで、めっき不着や剥がれ、ふくれなどのトラブルを防止できます。

3-2. めっき処理をする

電解白金めっきの本処理では、酸性の白金塩を含むめっき液(白金めっき液)を使用し、基材に白金の皮膜を形成します。めっき槽内で基材を陰極(マイナス極)、白金を供給する電極を陽極(プラス極)とし、電流を流すことで電解反応を起こします。 陽極から溶け出した白金イオンが、電流によって基材表面で還元され、金属として析出・成膜されるのが電解めっきの基本原理です。

白金めっきにおいては電流密度の調整に注意する必要があり、過度に強い電流では皮膜が粗くなる恐れがあります。反対に電流が弱すぎると十分な皮膜が形成されないため、使用目的に応じて最適な電流条件を設定することが求められます。この工程によって、高い耐食性・導電性を持つ白金の機能を製品表面に付加することが可能になります。

3-3. めっき後の洗浄・乾燥をする

残留成分が残ったままでは変色や性能劣化の原因となるため、白金めっきの完了後は製品表面に残るめっき液をしっかり洗浄する作業が必要です。通常は純水などを用いて複数回にわたり丁寧に洗い流します。マスキング処理をしていた場合は、洗浄前にマスキングを除去します。製品によっては表面の耐食性や安定性を高めるために、クロメート処理や変色防止処理などの後処理を行うこともあります。

洗浄の次は乾燥工程です。乾燥は水分による酸化や変色の発生を防ぐために不可欠な工程で、エアブローや乾燥炉などで速やかに行います。

4. 白金めっきのよくある質問

白金めっきに関して多く寄せられる疑問について、性質や使用環境、寿命などの観点から分かりやすく解説します。導入前の参考にぜひご覧ください。

白金めっきの方法とは?

4-1. 白金の性質は?

白金は、美しい銀白色の光沢と、展性・延性に優れた柔軟性を持つ貴金属です。耐酸化性や耐食性にも優れており、過酷な環境下でも安定した性能を維持します。また、白金族金属(白金族元素)との合金化によって高硬度を実現できるのも特徴です。希少性が高く、レアメタルとしての価値も持ちます。

4-2. 白金電極を長持ちさせる方法は?

白金電極を長持ちさせるには、使用条件の最適化が必要です。特にチタン白金電極の場合、めっきが薄いと高電流密度やフッ素系薬品により白金が劣化しやすくなります。「電流密度を下げる(電極面積を広げる)」「陽極と陰極の面積バランスを取る」「電解液の温度を30℃程度に保つ」などの工夫が有効です。

4-3. 使用される産業分野と皮膜は?

白金めっきは、純度99.9%の高純度な皮膜形成が可能で、低応力かつ約10μmの厚膜にも対応できます。 硬度はHv300程度で柔軟性もあり、化学的安定性や耐酸化性、高導電性に優れているため、主に電子・通信機器、自動車分野での接点部品や電極、センサーなどに活用されています。

まとめ

白金めっきは、優れた耐食性・耐熱性・導電性・化学的安定性を持ち、多くの産業分野で高機能な表面処理として重宝されているめっき方法です。処理方法には、電解めっきと無電解めっきがあり、それぞれの特性を生かすことで、用途や素材に最適な仕上がりが得られます。また、チタン白金電極のように機能性と長寿命を両立させる設計も可能です。

さらに、白金めっきは装飾性や生体適合性、環境適合性といった多様な特性も持ち、電子機器や自動車、医療機器などの精密分野でも幅広く活用されています。高品質な白金めっきをお求めの方は、実績豊富な三ツ矢のめっきをぜひご活用ください。高い技術力でニーズに最適なめっき仕様をご提案いたします。

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