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黒色処理とは?
はじめに
製品や部品に黒染め加工を施したい場面において、「黒色処理には種類が多く、どれを選ぶべきか分からない」「コスト・外観・耐久性・環境対応のバランスが取れた方法を判断できない」と悩む技術者・調達担当者の方もいるでしょう。黒色処理と一口に言っても、手法ごとに性能に差があり、用途に対して誤った選択をすると問題を招く恐れがあります。
当記事では、黒色処理の代表的な方式の特徴・違い・注意点について分かりやすく解説します。用途や要求性能に応じて適切な処理方法を検討できれば、社内仕様検討や外注先との打ち合わせにも自信を持って臨めるでしょう。
1.黒色処理とは
黒色処理とは、 金属などの表面を機能性または装飾性の目的で黒く仕上げる処理全般を指します。黒は可視光を吸収する特性を持ち、反射防止や放熱性の向上など、光学的・機能的な効果が期待できます。また、意匠としての黒色の深みや質感を生かす装飾目的で採用されることもあります。
なお、しばしば混同される「黒染め処理」は、黒色処理という大きな分類の中に含まれる一手法であり、黒色処理=黒染め処理ではない点に注意が必要です。黒色処理には用途に応じた複数の方法が存在します。
2.黒色処理の主な種類
黒色処理には、耐食性を高めるめっき系や外観を重視したアルマイト、コストに優れる黒染めなど、複数の方式があります。ここでは、代表的な処理ごとの仕組み・特徴・適用用途の違いを整理しますので、自社に合う処理方法はどれか比較検討する際に参考にしてください。
2-1.黒色クロムめっき
黒色クロムめっきは、 金属表面に黒色のクロム皮膜を形成する電気めっきです。カメラの上蓋や自動車・オートバイ部品、弱電・通信機器のシールドケース、時計、事務機など、幅広く利用されています。
皮膜は金属クロムと三価クロム化合物が微粒子状に積層しており、その表面凹凸により低反射性・防眩性・熱吸収性・耐食性を発揮します。膜厚が薄く寸法精度にも配慮でき、塗装下地としての密着も良好です。一方で、耐摩耗性に乏しく摩擦部品には不向きで、光沢付与にはワックスやシリコンなどの後処理が必要になる場合があります。また、皮膜の微細孔に六価クロムが残留しやすく、RoHS対応に影響が出る可能性がある点にも注意点です。
2-2.黒色クロメート
黒色クロメート処理は、 亜鉛めっき後に施すクロム化成皮膜の一種で、白錆の発生抑制と外観性の向上を目的とした後処理です。鉄に対する犠牲防食作用が強い亜鉛めっきにクロメート皮膜を重ねることで、長期的な防錆性能を確保しつつ、美しい漆黒外観が得られます。
機械加工品や複雑形状でも均一な処理がしやすく、量産性・コスト面にも優れる点から装飾用途でも評価されています。環境規制により、六価クロムを含有する従来の黒クロメート処理(六価化成処理)は減少し、現在はRoHSに適合する三価化成処理への移行が主流です。一方で、黒色皮膜は傷が目立ちやすいため、浸漬後の取り扱いには注意が求められます。
2-3.黒色電気ニッケルめっき
黒色電気ニッケルめっき処理は、 外部電源を用いる電解めっきによってニッケル合金の黒色皮膜を形成する方法です。黒ニッケルとも呼ばれます。皮膜はニッケルと亜鉛(またはスズ・銅など)の合金によって黒色化され、薄膜で仕上がるため、装飾部品など外観性を求める用途に広く利用されています。
比較的安価で耐摩耗性に優れる一方、耐食性は高くないため、必要に応じて下地に電気ニッケルめっきや無電解ニッケルめっきを施して性能を補います。色調は下地の平滑度や仕上げ状態によって変化し、光沢下地では濃いグレー、非光沢下地では淡いグレーに見えるなど、視覚特性にも注意が必要です。
三ツ矢の黒色ニッケルめっき
2-4.黒色無電解ニッケルめっき
黒色無電解ニッケルめっき処理は、 電力を使わず還元剤の化学反応によってニッケルを析出させる無電解Ni-Pめっきを黒色化したもので、カニゼンめっきの系統に属する表面処理法です。電気めっきと異なり、膜厚のばらつきが極めて小さく、複雑形状や精密加工品にも均一に処理できる点が特徴です。
無電解ニッケルめっきそのものの高い耐摩耗性・寸法精度・密着性・耐食性を維持したまま、表面を酸化・硫化などにより黒化することで光吸収性と意匠性を両立します。黒色クロムに比べて環境負荷が低く、六価クロムや鉛を含まない処方が可能なため、RoHSなどの環境対応品にも適用できます。光学筐体・レンズホルダ・医療器具・半導体装置部品など、反射防止と環境配慮を同時に求める用途で採用が拡大している表面処理加工技術の1つです。
三ツ矢の黒色無電解ニッケルめっき
2-5.黒色アルマイト
黒色アルマイト処理は、 アルミニウムを陽極酸化して形成される多孔質の酸化皮膜に黒色を付与する表面処理で、アルマイト処理の一種です。アルミ素地そのものを電解により酸化させて皮膜化するため、密着性や耐食性・耐摩耗性に優れ、さらに染料の浸透や電解着色によって深みのある黒色を得られます。
アルミ独特の質感を保ちながら高級感のある外観を実現でき、光学機器・光学部品などで求められる低反射(防眩)用途でも活用されています。めっきと異なり皮膜が素地と一体化しているため剥離しにくく、外装・装飾部品から実用部品まで幅広く適用されます。なお、アルミニウムに限定される処理であり、他の金属には直接適用できない点は設計段階での留意事項です。
2-6. 黒染め処理
黒染め処理は、 鉄鋼表面をアルカリ性溶液などで化学反応させ、Fe₃O₄(四三酸化鉄)と呼ばれる黒錆皮膜を生成して内部を保護する表面処理です。「染め」と名が付くものの染色ではなく、意図的に酸化皮膜を形成して錆の進行を抑える防錆効果を持つ仕組みです。
皮膜が非常に薄いため寸法変化が極めて小さく、寸法精度を維持したい部品にも適用することが可能です。また、比較的安価に黒色化できます。一方で、皮膜自体の耐食性は高くないため防錆油などの後処理が不可欠であり、油分が切れると腐食が進みやすい点には注意が必要です。外観は光沢のある黒色に仕上がることから、黒色化と寸法精度の両立を求める用途で採用されています
3.黒色処理における注意点
黒色処理は、意匠・防錆・光学性能などの多くの利点を持つ一方で、環境負荷や人体リスクを伴う工程も含まれます。実務で採用・外注手配を行う際は、以下の点を理解しておく必要があります。
・六価クロムなど環境負荷物質の影響
六価クロムは黒化処理の一部で用いられる成分で、第二種特定有害物質に分類され、強い毒性を持ちます。廃液中のクロムイオンが誤って排出されれば、土壌や地下水を汚染する可能性があります。また、粉末として飛散したり洗浄残渣として残留したりすることで、二次汚染につながる事例も報告されています。過去には基準値を超える六価クロムの検出事例もあり、 環境負荷の大きさが問題視されたことから、RoHSやREACHなどの環境規制が年々強化され、三価クロムや代替技術への移行が進んでいます。
・作業者や周辺への健康影響
六価クロムは皮膚炎・粘膜刺激・消化器がんなどの発がん性が指摘されており、吸入・接触は厳重管理が必要です。また、黒化処理工程で発生する酸・アルカリ・揮発性化合物により、火傷・呼吸器障害のリスクもあります。そのため、六価クロムを含む黒色処理を行う際は、換気や保護具が必要です。
・金属アレルギーへの配慮
ニッケルなどにアレルギー反応を示す例もあるため、用途・ユーザーに応じた仕様選定や表示が求められます。
まとめ
黒色処理には、黒色めっき・クロム系・ニッケル系・アルマイト・黒染めなどの複数の方法があり、それぞれ耐食性・耐摩耗性・意匠性・コスト・環境性などの優劣が異なります。したがって、どれが正解なのかは一概に言えず、製品用途・性能要求・予算・規制対応の観点から最適な処理を選ぶことが求められます。
また、一部の処理は六価クロムなどの環境負荷物質を扱うため、代替手段の検討や安全対策の理解も不可欠です。これらを踏まえ、まずは自社製品で重視すべき要件を明確にし、候補となる処理方法を比較検討していくことが重要です。
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